外壁塗装の費用は、「どの素材に塗るか」によって大きく異なります。
モルタルやサイディング、ALCパネルなどの外壁素材に加え、屋根の種類や施工方法によっても費用に差が出るため、事前に相場を知っておくことが重要です。
この記事では、外壁・屋根の素材別に価格の目安と注意点を解説し、素材ごとの違いや見積もりの考え方がわかるよう丁寧に紹介していきます。

塗装工事を検討している方は、ぜひご自身の建物に合った価格帯を把握する参考にしてください!
塗装する素材ごとに費用が違う理由とは?
塗装にかかる費用は、素材の種類によって塗料や施工方法が大きく異なるため、それぞれの特性を理解することが重要です。
この章では、素材の違いによってどのように費用が変わるのかを解説します。
外壁素材によって塗料・施工工程が異なる
外壁の素材によって、使用する塗料の種類や施工の流れが大きく変わります。
たとえば・・・
・モルタル外壁:吸水性が高く、下塗りに密着性の高いシーラーなどが必要となり、ひび割れが多い場合には補修工程も追加されます。
・窯業系サイディング:表面に塗膜があるため、古い塗膜の劣化具合を見てケレン(旧塗膜除去)や目地シーリングの打ち替えなどの処置が必要です。
・金属サイディング:サビ止め効果のある塗料を使用する必要があり、塗布の前に高圧洗浄や研磨処理が必須となることもあります。
このように、素材の性質や劣化状況によって必要な工程や塗料が異なり、それが費用にも反映されるのです。
屋根塗装が加わると費用はどう変わる?
外壁塗装と同時に屋根塗装を行うことで、足場を共通で使用できるため足場代を節約できるというメリットがあります。
一方で、屋根は高所作業となるため安全対策に手間がかかり、外壁よりも施工難易度が高くなるケースも少なくありません。
さらに、屋根は日差しや雨風を直接受ける部分であるため、耐久性・耐候性に優れた専用塗料を使用する必要があり、1㎡あたりの塗料単価が高くなる傾向にあります。
結果として、塗料費・施工手間ともに上乗せされるため、全体の工事費用は屋根塗装を加えることで20万〜40万円程度増えることが一般的です。
外壁素材別の費用目安と注意点
素材ごとの価格帯と注意点を把握することで、不要な追加費用を防ぎ、適切な施工プランを立てることができます。
ここでは代表的な外壁素材ごとに費用の目安と施工上のポイントを紹介していきましょう。
モルタル外壁の特徴と塗装費用の相場
モルタル外壁は、セメントと砂を混ぜて作られた素材で、塗膜が風雨や紫外線の影響を受けやすく、表面にチョーキング現象(粉化)やひび割れ(クラック)が発生しやすいという特徴があり、特に築年数が経った住宅では、ひび割れの補修や下地処理が必要になることが多く、これにより施工工程と費用が増加しますし、さらには吸水性が高いため、下塗り材には高密着のシーラーやフィラーを使用するなど、下地処理に手間がかかる傾向があります。
塗装費用は塗料のグレードや補修の内容によって変動しますが、30坪の住宅で80万円〜120万円が相場とされ、状態によってはさらに高くなるケースも出てくるでしょう。
サイディング(窯業系・金属系)の価格と下地処理の有無
サイディング外壁は大きく「窯業系」と「金属系」に分類され、それぞれ施工方法や必要な処理が異なるため、費用にも差が出てきます。
窯業系サイディングはセメント質の材料でできており、日本の住宅で最も一般的な外壁素材です。
経年劣化により目地のシーリング材がひび割れたり痩せたりするため、塗装前にシーリングの打ち替えや補修が必要になることが多く、これが費用に影響します。
一方、金属系サイディング(ガルバリウム鋼板など)は軽量で耐久性が高く、断熱材と一体化した製品もあるため施工性に優れていますが、サビの発生を防ぐために防錆塗料の使用や下地処理(高圧洗浄・研磨など)が欠かせません。
一般的な30坪程度の住宅では、塗装費用は90万円〜130万円が相場で、下地の状態や塗料のグレードにより前後します。
ALCパネルの塗装はなぜ高め?注意点と施工法
ALC(軽量気泡コンクリート)パネルは、軽量で高い断熱性・耐火性を持つ優れた外壁材ですが、その一方で非常に吸水性が高く、ひび割れや劣化を放置すると内部に水が浸入しやすくなりますため、塗装時には通常よりも念入りな防水対策が求められます。
施工では、下塗りに防水性の高い専用プライマーを用い、その上に中塗り・上塗りを行うのが一般的ですが、下地が劣化している場合は、クラック補修や再シーリング、防水材の重ね塗りなど、複数の下地処理工程が必要になるようです。
これにより施工工程が増えるため、費用も高くなりがちで、一般的な30坪の住宅で、塗装費用の相場は100万円〜150万円程度とされています。

ただし、下地の状態や使用塗料によってはさらに高額になるケースもあります。
トタン・金属系外壁の費用目安と耐用年数の違い
トタン外壁は、金属素材の中でも比較的安価で施工しやすい一方、経年によってサビが発生しやすく、劣化の進行が早いという特徴があるため、塗装メンテナンスの頻度が高くなりがちで、防錆処理を含めた塗装が必須となります。
施工時にはサビの除去や下地処理(高圧洗浄・ケレン作業)を丁寧に行い、防錆効果のある下塗り塗料を使用することが一般的です。
これらの工程により、30坪程度の住宅での費用相場は70万円〜100万円程度とされます。
耐用年数は塗料のグレードや施工状況にもよりますが、おおよそ10年〜15年程度とされており、外壁の劣化状況を定期的にチェックしながら、計画的な塗り替えが求められるでしょう。
屋根の素材と工法による価格の違い
屋根との同時施工が必要なケースとは?
屋根材に劣化が見られる場合や、足場を共通で設置できる状況であれば、外壁と屋根を同時に塗装することでトータルの工事費用を抑えることが可能です。
特に塗装工事では足場代が全体費用の2割以上を占めることもあり、外壁と屋根を別々に施工すると足場費用が二重に発生する恐れがあります。
また、築10年以上経過した住宅では、外壁・屋根ともに同時期に劣化が進行している可能性が高く、足場を活用してまとめて塗装する方が効率的です。
結果として工期の短縮にもつながり、居住者への負担も軽減できます。
屋根葺き替え・カバー工法の費用とタイミング
屋根の劣化が進行していたり、既存の屋根材が著しく傷んでいたりする場合は、塗装では対応しきれず、屋根自体を改修する必要が出てきますが、このようなケースでは、「カバー工法」または「葺き替え」という選択肢が検討されます。
カバー工法とは、既存の屋根材の上から新しい屋根材(主にガルバリウム鋼板など)を重ね張りする工法で、既存の屋根を撤去しない分、工期が短く廃材処理費も抑えられるのがメリットです。
一般的な30坪程度の住宅では、カバー工法の費用は80万円〜150万円程度が相場とされます。
一方、葺き替えは既存の屋根材をすべて撤去し、新しい屋根材を下地から全面的に施工し直す方法です。
老朽化が著しい屋根や、雨漏りのリスクがある場合に有効な手段で、費用は120万円〜200万円以上かかることもあります。
下地の劣化が著しい場合や、重量のある瓦屋根を軽量な金属屋根に変更する場合などに選ばれることが多いです。

どちらの工法を選ぶかは、屋根の状態や将来のメンテナンス計画を踏まえて、専門業者と相談しながら判断することが大切です!
塗装面積・傾斜・劣化状況が価格に与える影響
屋根の面積が広いほど必要な塗料や施工時間が増えるため、当然ながら費用も高くなりますし、屋根の勾配(傾斜)が急な場合は、職人の作業が難しくなり、安全対策として仮設足場や落下防止設備の設置が必要となるため、その分コストが上乗せされます。
さらに、経年劣化によって屋根材が傷んでいる場合は、下地補修やクラック処理、防水処理などの追加工程が発生し、基本の塗装費用に加えて補修費が必要になるケースもあり、これらの条件が重なることで、見積額に大きな差が生じる可能性があるため、事前に現地調査でしっかりと確認しておくことが重要です。
素材別価格の見積もり事例と比較
実際の施工事例を通じて素材ごとの費用差や工事内容の違いを把握できるため、ここでは外壁や屋根の組み合わせ別に、価格の目安と施工内容の一例を紹介します。
サイディング+スレート屋根の一戸建て事例
30坪の一般的な一戸建て住宅において、外壁は窯業系サイディング、屋根はスレート材というよく見られる組み合わせの事例です。
このケースでは、外壁と屋根の両方に対して足場を共通で設置し、下地処理・高圧洗浄・シーリングの打ち替え・外壁塗装・屋根塗装といった一連の工程をすべて含んだ施工内容となっています。
屋根には、夏場の室内温度上昇を抑える効果が期待できる遮熱塗料を使用。
使用塗料のグレードは中程度、外壁は2回塗り仕上げ、屋根は3回塗りの仕様で、全体の費用はおおよそ120万円前後が目安となります。
ALC外壁+陸屋根の建物での費用例
3階建ての鉄筋コンクリート(RC)造ビルで、外壁には吸水性が高いALCパネル、屋根はフラットな陸屋根で防水シート仕上げとなっている建物の事例です。
外壁には防水性を確保するために専用の高密着プライマーと防水塗料を組み合わせた仕様を採用。
屋根部分は紫外線や雨風の影響を受けやすいため、遮熱効果や耐久性の高い塗料を使用していて、さらには外壁・屋根ともに下地処理やクラック補修、防水層の強化といった工程が必要となるため、施工の手間も多く、全体の費用は約250万円前後に上ります。
ALCや陸屋根の特性を踏まえた丁寧な施工が求められるケースです。
素材ごとの価格差と施工難易度を考慮した選び方
外壁や屋根に使用される素材は、それぞれ施工の難易度や手間、使用できる塗料の種類が大きく異なります。
たとえば、モルタルは吸水性が高く補修作業が多くなりがちで、ALCパネルは防水対策が必須、金属サイディングはサビ対策が必要といった具合に、素材によって施工工程が大きく変わりますため、単純に見積金額の安さだけで判断すると、将来的に追加の修繕費がかかったり、期待した耐久年数に満たない可能性があるでしょう。

長期的なメンテナンス性や建物全体の耐久性をふまえ、総合的にバランスのとれた素材と施工方法を選ぶことが大切です!
まとめ|素材ごとの特徴を理解して適正価格を判断しよう
塗装工事の最終的な費用を左右する最大の要素は、「どのような素材に塗装するか」です。
モルタルやサイディング、金属、ALCパネルなど、それぞれの外壁・屋根素材には特有の性質や施工時の注意点があり、それによって必要な工程や使用する塗料も変わります。
そのため、まずはご自宅の外壁や屋根がどのような素材でできているのか、形状や劣化の程度はどうかといった点を正確に把握することが第一歩です。
素材によっては、下地処理に時間や費用がかかるもの、特別な塗料が必要なもの、防水対策が重要なものなどもあるため、建物に合わせた施工プランが求められます。
また、見積もりを依頼する際には、複数の業者に同じ条件で見積もりを依頼し、価格だけでなく施工内容や説明の丁寧さ、アフターサービスの有無なども含めて比較・検討することが重要です。
素材の特性を理解したうえで適正な施工方法を選び、信頼できる業者に依頼することで、長期的に見て満足度の高い外壁塗装を実現することができますよ!
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